線香花火


「あ、わ、私も、ずっと前から「だから早く京から出て」…え?」

「早く京を出るんだ、今すぐに」

「ちょ、ちょっと待ってよ総司くん!どういうこと?」

戸惑ったように僕の腕を握る君を直視できなくて、いつのまにか上がっていた花火を見上げる。

つられるように君も花火を見上げたのが視界に映って、泣きそうなその横顔に、同じものを見られるのはこれで最後なんだと、嫌というほど痛感させられた。

一層大きな花火が夜空に咲いて、僕は君から一歩離れる。

離れる体温に、君は僕を見上げた。

「総司くん…何で?」

花火がまた夜空に咲いて、君の横顔を照らす。

もしこんなことにならなければ、あの花火を君と笑って見上げられたのだろうか。

綺麗だねって君が言ったら、僕がそうだねって言って、来年も再来年もその先も、ずっとずっと君と見上げられたのだろうか。



……でもどんなに君との未来を夢見ても、僕が選べるのは一つしかないんだ。



「僕は今日、君の父上を殺さなきゃいけない」

「……え?」

君のその声をかき消すかのように、無数の花が轟音と共に夜空に咲いた。

「こ、ろす?父を?総司くんが?…ま、待ってよ、意味、分かんない」


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