神様修行はじめます! 其の三
「とうに雛型としての役目を終え、逝ったとばかり思うておったわ」


絹糸が万感迫る声を出した。


なんともいえない複雑な表情で雛型を眺めている。


永遠の時を生きる神獣。


絹糸にとって、関わり合う全ての人間は自分を置いて逝ってしまうもの。


どんなに深く心を通わせ合ったとしても、儚く消えていく・・・。


それが今、千年の時を越えて当時を生きた者と巡り会った。


ありえない事が起きたんだ。


この人はもう人間とはいえない存在だけど、さぞかし感慨深いだろうな。


あたしは、じっと座っている絹糸の丸い背中を見てその心中を思う。


かける言葉が見つからない。


良かったね、って、言ってもいい・・・のかな?


「座り女の雛型か。僕はまったく知らなかった」


門川君が驚きを隠せない声で呟いた。


お岩さんもブンブン頷きながら同意する。


セバスチャンさんもさすがに初耳といった表情だ。


「わたくしもですわ! 座り女の管轄は端境の一族が扱っていたなんて!」


「元々、座り女そのものがあまり良く理解されていない存在でしたからね」


うん。そうなんだよね。


初めて座り女を見た時はその異様さに飛び上がって驚いたけど。


人間、慣れってのはすごいもんで。


気にしなくなっちゃうんだよね。もう、そこにあって当然っていうか。


なんていうか、道端のお地蔵様みたいなカンジ。


あ~、座り女だ~、いつもお疲れさーん、みたいな。


あたしですらそうなら、ここの皆はもっとそうだろう。


なんたって千年前からあるんだから、空気と同等の存在だ。

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