神様修行はじめます! 其の三
門川君の薄墨色の衣装が暗がりに溶け込む。


彼は数歩前へ進み、止まった。


その隣にセバスチャンさんが寄り添うように立つ。


門川君、セバスチャンさん、マロ。


三人が三つ巴に向き合い、それぞれの視線を絡ませた。


「端境当主殿」


「・・・・・・」


「僕は門川の当主だ」


「さようでおじゃりましょう」


「だが僕は、あなたと絹糸の間で交わされる会話が理解できない。何も知らないからだ」


「いかにも」


「その事を、純粋に恥ずべき事と思う」


門川君のゆっくりとした言葉が、闇の中に通って響く。


「事情があるなら、考慮もしよう。不当な扱いと言うなら、配慮もしよう。だが・・・」


彼の、感情の見えない目。


「知らぬ事を責め立てられても、僕には対処のしようが無い」


焦りも怒りも何も感じられない態度で、あくまでも淡々と彼は話し続ける。


「申し開きがあるなら、ここでその全てを聞く。そして公正な判断を約束しよう」


「いかにも、あなたは何もご存じない」


マロが深く頷いた。


「それは無理からぬ事におじゃる。あなただけでなく、もはや全ての門川の者が知らぬ」


「・・・・・・」


「だが端境の一族は覚えておじゃる。足を踏んだ者は忘れても、踏まれた者は永遠、忘れぬ」

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