神様修行はじめます! 其の三
とりあえず、お礼だけはちゃんと言っておこう。


じゃないと後で因縁つけられそうな気がして怖い。


「ありがとうアンソニー」


相変わらずどれがアンソニーだか全然分かんないから、適当に一番近場なのにそう言った。


「アマンダ、それはダニエルちゃんですわ」


「あ、そ、そう? じゃあこっちかな?」


「それはカーターちゃんですわ」


「えっと・・・こ、これ?」


「それはシャーロットちゃん。女の子ですわよ。アンソニーちゃんはこの子ですわ」


お岩さんは迷いも無く一羽のペンギンの前にしゃがみ込んだ。


「よくやってくれましたわ! アンソニーちゃん!」


どうやらアンソニーらしきそのペンギンが、誇らしげに白い胸を張る。

・・・正解みたい・・・。


お岩さんて、まさかこの全員分に名前付けてるんだろうか?


てかそれ以上に、この全員の見分けがつくとか言い出さないでしょうね?


「ジュエル様、皆様、お怪我はございませんか?」


セバスチャンさんとしま子が近寄ってきた。


そうだ! ケガといえばしま子!


「しま子、大丈夫!?」


「うああうぅ~~!」


「大丈夫のようですね。しま子は回復力が高いですし、さきほど傷口を牛に舐めさせましたので」


・・・・・え? 舐めた? 牛が?


見ると、しま子の腕がべっちょんべっちょんに濡れている。


うわ、ベットベトじゃん! なにこれデロドロッとしてるぅ~!?


「権田原の牛の唾液には、高い治癒効果がありますの!」


「ケガはもちろん、肉体疲労にも効果がございます」


「アマンダ、凍雨さん、お疲れでしょう? 遠慮せずに牛の唾液を・・・」


まさか飲めとか言わないよね!!?


「いい! 全然まったく疲れてないから!」


「ぼ、ぼくもすっごい元気ハツラツです!」


あたしと凍雨君は仲良くブンブン首を横に振った。
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