神様修行はじめます! 其の三
「あの! ぼく走っていっちゃダメですか!? 走りには自信があるんですけど!」


「ダメに決まってますわよ」


「移動で体力と気力を消耗するより、牛で移動した方が効率的でございます」


「いや、効率的っていう次元の問題じゃなくて・・・!」


「凍雨君、気持ちはすっごく理解できるけど、ここは納得して。お願い」


どうやらアンソニー自身はすっごいヤル気満々みたいだし。


見てよあのキラリと光る赤い目と、ピンと張られた白い胸。


あれはかなり腕に自信があると見た。


赤い目が、チラッと鋭く凍雨君に向けられる。


『オラぼうず、グズグスすんな。男なら腹くくってさっさと乗らんかい』


・・・って言ってるんだと思う。たぶん。

もう彼って準備万端。


「・・・分かりました」


ガクッとうな垂れた凍雨君が男らしく決断してくれた。


ぐいっと威勢良く顔を上げてドスドスと足取りも荒く牛に近寄る。


「頼んだぞアンソニー!」


あたしはしま子に支えられるようにして牛に跨る。


お岩さんが、馬に乗る貴婦人のように横座りで牛に乗った。


その背後にはセバスチャンさんがサポート。


アンソニーを頭の上に乗っけた牛には、凍雨君が少し情けない表情で跨った。


ごめん。貧乏クジ引かせちゃって。

あとできっと埋め合わせするからね!


「それでは行きますわよ!」


お岩さんの掛声で、あたし達は一斉に雪原を進みだした。


ドドドドド・・・!!


雪の上を難なく牛達は疾走していく。


あたしは牛の背に揺られ、心の中で一心に祈った。


頑張って、牛! 一刻も早く権田原へ・・・!


そして権田原を守りきって、一刻も、一刻も早く・・・


門川君の元へ!!

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