神様修行はじめます! 其の三
お岩さんが牛の背中から飛び降りて叫んだ。


「里の皆は!? 皆は無事ですの!?」


「異変に気が付いてすぐ、地下の空洞に避難しただよ」


「多少は怪我人も出たが、ほとんど無傷だべ」


「いや~、毎月やってた防災訓練がちゃんと役に立ったなあ!」


「地下には食料もたっぷり貯蔵してあるし、備えあれば憂いなし、だべ!」


「んだんだ!」


おじさん達はあっはっはと笑う。


あぁ、そうか! 権田原には秘密の地下道があるんだった!


そこに真っ先に避難してたんだね。良かったー!


お岩さんも安心して胸を撫で下ろす。


「良かったですわ! 気が気じゃありませんでしたわよ!」


「権田原の民は逞しさとしぶとさが売りだべ。こんなの、屁でもねえべさ!」


『ギャアアァァ――!!』

小屋の外から叫び声が響いてくる。


「あいつら、調子に乗ってどんどん増えてやがるなあ」


「最初はそれほどの数でもなかったのに、今じゃ里全体に広がってるべ」


「いったい何が起こってるだ?」


『グギャ――!! グルルゥ!!』


うわっ、凄い声。ますます興奮してる。人間の臭いに気が高ぶっているのかな?


「このままでは敵の数が増える一方ですわ」


「さようでございますね。門川から応援部隊が来たとしても、防ぎきれるかどうか・・・」


「困ったな。何か役に立つアイテムとかないかな?」


凍雨君が着物のあちこちから門川の家宝を引っ張り出して床にバラ撒いた。


「おや、これは・・・?」

セバスチャンさんがその中のひとつに手を伸ばす。


理科実験道具の、フラスコのミニチュア版みたいな形の入れ物に、薄紫色の液体が入ってる。


「凍雨様、これと同じ物を持っていませんか? 黄緑色の・・・」


「持ってます。 これですか?」


袖口から引っ張り出された物は、まさしく黄緑色の小瓶。
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