神様修行はじめます! 其の三
「せ―――のっ!」


権田原のおじさん達が、小屋の地面に敷かれている大きな木の板を協力して持ち上げる。


ここが地下道への入り口なんだね。


下へ向かう緩い坂道が見えた。ここを下っていけばいいってことか。


「岩さま、皆さんも気をつけるだよ!」


「心配無用ですわ。あなた達はすぐに牛を連れて避難場所へ」


「こっちの方も心配ねえべ。あ!そうだ! 一番大事なモン忘れてたべ!」


「なんですの?」


「こんな非常時には絶対に必要不可欠なモンがあるべさ!」


非常時に必要不可欠なもの?


なに? 権田原の特別性の便利アイテム。とか?


「これだべ!」


おじさんが懐から取り出した竹皮の包み。

・・・それって・・・


「権田原特製、梅干おにぎりだべ!」


あ、やっぱり。


じゃーん!って効果音が聞こえそうなくらい、得意満面な顔。


「腹が減っては戦は出来ねえ!」

「んだ! たっぷり食って精をつけねばな!」


おじさん達は次々と竹皮の包みを取り出す。


「そこのボウズ! 腹減ってねえか?」


「え? あ、その、ぼくは別に・・・」


「ほらほら、男は黙って食って黙って働く! これが美学っちゅーもんだべ!」


「天内の嬢ちゃん! 好物だべ? さ、持ってけ持ってけ!」


おにぎりを押し付けられてしまった・・・。


うーん。気持ちはすっごくありがたいんだけど・・・。


やっぱりちょっと、平和ボケ?


この図太さがあってこその権田原なんだけどさ。


本当に、あの時セバスチャンさんが死んじゃってたら、この里っていったいどうなっていた事やら・・・。
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