神様修行はじめます! 其の三
あの涙は後悔の涙なのだろうか。


夫の命を救った事を悔やんでいるのだろうか。


いっそこのまま見殺しにすべきかと。


そうするべきだと囁く自分の心に、身を切るほどに悶え苦しんでいるのだろうか。


それでも・・・


それでも見捨てられない自分自身の愛を呪っているのだろうか。


目の前で死に行く夫の姿を見ながら・・・千年。


千年、そんな苦しみを抱え続けてきたのか。


そして、そこまでしても、そうまでしても・・・


罪は消えない。


犯した罪は消えない。

その事実は未来永劫、消え去ってはくれないんだ。


人は生きていく以上、罪を犯さずにはいられない。


生き続けていくならば、人は同時に罪も犯し続けていく。


生を願うは、罪の根源。

人は皆、全て罪人なんだ。


罪を犯していない人間なんて、この世に存在するものか。


なのに・・・


誰が誰を裁くというのか。


誰がどの罪を責めるというのか。


そんな資格がどこの誰に存在するのか。


それでも・・・・・

それでも、罪は裁かれなければならない。


金欲しさに子どもを攫い、殺す事実が『罪』ならば。


愛する者の命を救うために、他者の命を奪ってしまうも同じ『罪』。


罪は断罪されなければならない。


人の世において責められ、償わなければならないんだ。


いくら償ったところで、決して消えぬと知りながら。


誰にもそんな資格は無いと知りながら。


それでも人は苦しみ続けなければならないんだ。

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