神様修行はじめます! 其の三
長いシッポをユラユラさせて絹糸がこちらを見上げている。
「これほどの大掛かりな術式の、しかも完成形の中に飛び込むなどと。死ぬ気か? 永久よ」
「残念ながら死ぬ気はない」
「とてもそうは思えぬわ。こんな無茶な真似をされてはのぉ」
術式の中に飛び込んだ? それって、あたしにかけられていた術式よね?
無茶な真似って・・・。
あたしはもう一度彼の姿をよく見た。
白いハンカチが血を吸い取って、かなり赤く染まってしまっている。
薄墨色の着物の胸元が血に染まって広範囲で変色していた。
さすがに鼻血程度じゃこうまでならない。たぶん吐血したんだ。
鼻や口からだけじゃない。爪の間からまでタラタラと出血し、止まる様子が無い。
これ、術式の中に飛び込んだ・・・から?
あたしを救い出すために?
そのせいで彼が全身血だらけに・・・。
「強大な力場を強引に乱した結果じゃ。本来なら建物が破壊され、死人が出てもおかしくは無い」
「・・・・・」
「それを永久が引っ被ったんじゃよ。被害を最小限に抑えるために」
門川君。あたしを助けるために・・・。
こんな目に遭ってしまった。
いいえ、遭わせてしまった。あたしが。
嬉しい気持ちより何より、申し訳なくて泣きそうになる。
「小娘よ」
静かな絹糸の呼びかけに、あたしの胸はギクンと震える。
「お前はもう一人前の神の末裔。我はそう言った」
「・・・・・」
「そう信じておったからじゃ。だがその認識を改めねばならぬか?」
「・・・・・」
「お前、自分がした事を正しく理解しておるか?」
絹糸の声は、あくまでも静かで穏やかだった。
ほんの少しも怒ってるとか、荒々しいとか、そんな気配は無かった。
だからこそ・・・
余計に、次に来るだろう言葉があたしには怖かった。
「これほどの大掛かりな術式の、しかも完成形の中に飛び込むなどと。死ぬ気か? 永久よ」
「残念ながら死ぬ気はない」
「とてもそうは思えぬわ。こんな無茶な真似をされてはのぉ」
術式の中に飛び込んだ? それって、あたしにかけられていた術式よね?
無茶な真似って・・・。
あたしはもう一度彼の姿をよく見た。
白いハンカチが血を吸い取って、かなり赤く染まってしまっている。
薄墨色の着物の胸元が血に染まって広範囲で変色していた。
さすがに鼻血程度じゃこうまでならない。たぶん吐血したんだ。
鼻や口からだけじゃない。爪の間からまでタラタラと出血し、止まる様子が無い。
これ、術式の中に飛び込んだ・・・から?
あたしを救い出すために?
そのせいで彼が全身血だらけに・・・。
「強大な力場を強引に乱した結果じゃ。本来なら建物が破壊され、死人が出てもおかしくは無い」
「・・・・・」
「それを永久が引っ被ったんじゃよ。被害を最小限に抑えるために」
門川君。あたしを助けるために・・・。
こんな目に遭ってしまった。
いいえ、遭わせてしまった。あたしが。
嬉しい気持ちより何より、申し訳なくて泣きそうになる。
「小娘よ」
静かな絹糸の呼びかけに、あたしの胸はギクンと震える。
「お前はもう一人前の神の末裔。我はそう言った」
「・・・・・」
「そう信じておったからじゃ。だがその認識を改めねばならぬか?」
「・・・・・」
「お前、自分がした事を正しく理解しておるか?」
絹糸の声は、あくまでも静かで穏やかだった。
ほんの少しも怒ってるとか、荒々しいとか、そんな気配は無かった。
だからこそ・・・
余計に、次に来るだろう言葉があたしには怖かった。