神様修行はじめます! 其の三
門川君の目が冷静に、鋭い冷たさを帯びていく。


「この状況の説明をしてもらおう。時間が無いので簡潔に頼む」


「当主様」


「納得のできる話を聞きたい。この、天内君への所業への。場合によっては・・・」


「・・・・・」


「一切の容赦はしない」


声にキリリと冷気が宿る。

怒りの熱さではなく、冷たい氷の気配が。


「お怒りはごもっともにございますが、必ずや御理解もいただけるものと信じております」


「理解?」


「さようにございます」


平伏したまま女性は訥々と話し続ける。


「この非常事態の惨状、速やかに終結するのに新たな座り女を機能させるのが必然」


「・・・それで?」


「当然、世界を守るための礎がどうしても必要でございました」


「その礎が天内君だと言うのか?」


「さようにございます」


「ほぉう? しかしなぜ、よりにもよって当主の側近である小娘に白羽の矢を立てた?」


絹糸が会話に割り込み、大袈裟に小首を傾げた。


「神の力を持つ娘がこの世界に小娘ひとりしか存在せぬ、というなら話も分かるがのぉ?」


さも不思議で、どうにも理解できない、といった口調。


「わざわざ小娘を選ぶか? しかも永久に無断で。どうにも我にはそのあたりの事情が理解できぬでのぉ」


嫌味のたっぷりこもった絹糸の声と視線。


御簾の向こうからはまったく動じない返答が聞こえてくる。


「当主様、この世界を守るための犠牲は必須。そして犠牲とは、大きければ大きいほど・・・」


「・・・・・」


「上に立つものが払わねばならぬのでございます」

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