神様修行はじめます! 其の三
「遅いぞ天内君。早く来たまえ」


声の方を見ると、門川君と絹糸の足元に複雑な図形が浮かび上がっている。


「それって・・・」


「転移の宝珠だよ。来る時もこれを使用した」


「やれやれ、千年かかった先人達の苦労じゃというのに、たった一日で・・・」


「宝珠だろうと使うときには使わせてもらう。飾るだけなら花や絵で充分だ」


あたしは道場の方をチラチラ気にしながら図形の中に足を踏み入れる。


「どうした? 天内君」


「あの、いいの? あの人達」


「あやつ等とて門川の術師じゃ。身は守れる。刺客部隊もついておるでな」


「いや、そーゆー意味じゃなくてさ」


あんなに真剣にこの事態を憂慮してくれていたのに。


その訴えを軽く無視しちゃっていいの?


そりゃ、あの人達の方法には多少の・・・ていうか、かなり大きい問題点があるけど。


「なんじゃ? 小娘はそんなに座り女になりたかったのか?」


「なりたいわけじゃないよ!」


「いいんだよ。あれで茶番は終了だ」


「茶わん?」


「ちゃばん、じゃ。ちゃばん。底の見え透いた三文芝居の事じゃよ」


「お芝居って・・・」


だってあんなに本気で泣いて訴えてたじゃん!


すすり泣きながら、声を詰まらせて、もうホント必死にさ。


あたしまで胸が詰まって涙が出てきたよ。


あれを底の見え透いた芝居だなんて、それはちょっとあんまりじゃない?


ひょっとしてふたり共、「女の涙なんてしょせん全部が嘘っぱち」とか思ってる?


それはあんまりだよっ。


門川君と絹糸は顔を見合わせ、はぁ、と大きな溜め息をついた。


「君、やっぱりあれを真に受けたのか?」


「ほんにお前は、バカ正直でバカ素直でバカ真っ直ぐな、素晴らしい気質じゃのぉ。ナオそっくりじゃ」


「まさに3点セットの血統書付きの短絡思考だよ」


「あんた達、褒めてないでしょ!? それ!」


「あれはあの女の言霊じゃよ」


は? 言霊?

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