神様修行はじめます! 其の三
「あらあら困ったこと。里緒は急に言葉を忘れてしまったようねえ」


小ばかにするような塔子さんの声。


「ねえ皆さん、里緒は言葉を忘れてしまったのですって」


「まあ、それは大変。思い出させてあげなくてはねえ」


「刺激を与えれば言葉が出てくるかも」


「ああ、それは良い考えだわ」


塔子さんは手に持った扇をたたみ、あたしの頭をぺんぺんと叩き始めた。


「そうら、出てこおい、出てこおい」


――ぺん、ぺん、ぺん


くすくす・・・ふふふ・・・

おほほほ・・・・・・


頭の上を繰り返し叩く扇。蔑む笑い声。


あたしはますます唇を強く噛み、両手をギュッと握り締めて屈辱に耐える。


我慢、我慢。絹糸と子猫ちゃんの為だ。


こんなの全然平気だもん。痛くもかゆくも、無いもんっ。


「・・・塔子!」


絹糸の鋭い声が聞こえた。


金色の両目が、声以上に鋭く塔子さんを睨み上げている。


「過ぎた行いは身を滅ぼすぞ。小娘をこれ以上愚弄すれば、ただでは済まさぬ」


「あら、それは脅しかしら?」


絹糸の叱責なんて、どこ吹く風。


あたしの頭を叩く手も休めずに、塔子さんは余裕の声だ。


「ここで騒ぎを起こしてただで済まぬのは、さあ、どちらの方かしらねえ?」

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