神様修行はじめます! 其の三
― ザザッ! ―


絹糸の攻撃を潜り抜けたトカゲが、塔子さん目掛けて飛び掛った。


・・・危ない! 塔子さんっ!


ガッと全身の血が瞬間沸騰し、あたしの頭の天辺にのぼる。


バクンと唸った心臓の音が聞こえると同時に、トカゲの中心に黒い渦が・・・


視えたっ!


ほとんど反射神経のなせる業で、あたしの手の平が黒い渦を突く。


ゴォォッ!と赤い炎がトカゲの体を覆った。


「・・・!?」

とっさに塔子さんが驚いたように身を引き、あたしとトカゲを見比べる。


― ザッ! ザザッ! ―


間髪おかずにトカゲが二匹同時に襲い掛かってきた。


瞬時に体勢を整えた塔子さんの右拳が唸る。


そしてあたしの目にも黒い渦が・・・。


「でりゃあぁぁー!」「うおおー!」


― ドゴオ! ゴォォッ! ―


片方のトカゲは粉々に粉砕し、もう片方は炎に包まれ地に転げる。


よっしゃあー! やったー!

あたしと塔子さんはグッと握り拳を掲げた。


ムク犬、刺客部隊、疲弊した凍雨君。


その全員同時に治癒している門川君を守るように囲むあたし達。


絹糸が全体攻撃を仕掛け、それに漏れた相手を塔子さん、しま子、あたしが片付ける。


・・・すごいわ! なんて完璧な連携!


「なんか年末大掃除の我が家の光景みたい!」


「里緒ったら余計なこと言わないでよ! 気が抜けるじゃないの!」


嬉々として叫ぶあたしの声に、塔子さんがトカゲに蹴りを入れながら返す。


「だってほんとなんだもん! ちなみに絹糸がお母さん役ね!」


「二本足の娘を生んだ覚えはないわ!」


「・・・ちょっと里緒、じゃあ、あたしは誰役よ?」


「塔子さんは間違いなくお父さん役!」


「なんであたしが男役なのよ!?」


「どう見てもピッタリじゃん!」

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