神様修行はじめます! 其の三
「あーいそがしーいそがしいーっとぉ」


シュタタッと素早く立ち去るあたし。


それでもまだ塔子さんの声が追いかけてくる。


「本当に常識の無い子ね。さすがは大罪人の孫だわ」


―― ピクン


(大罪人の、孫・・・)


あたしの足が止まり、腕の中の絹糸の体が、わずかに震えた。


「門川の歴史に残る罪を犯し、永久追放にまでなった大罪人、天内ナオ」


あたしは、塔子さんの紅い唇から放たれる言葉を、目で追う。


「永劫に消える事のない罪を犯した罪人。その血を引く、天内里緒」


目が・・・あの一重の目が。


蛇のような目が。


あたしをじぃっと見つめている。


今にも、飲み込もうとしているかのように。


「汚れた罪人の血の流れる体で、よくも門川当主のそばにいられるものね」


心臓が静かに波打ち、そして頭から爪先まで、ささくれ立つ様な冷たい血が流れ始める。


「この恥知らず。・・・その当主様の祖母を穢したくせに」


言葉が、あたしの全身を貫き・・・・・・

血が、凍った。

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