神様修行はじめます! 其の三
「カモメちゃんもよろしく! 背中に乗せてね!」


「カモメちゃん?」


「アレクサンドロヴィチ3世の奥さんだよ」


「・・・それはあんたが名付けたんでしょ?」


「うん。よく分かったね」


「・・・・・・」


軽い溜め息をついて、塔子さんがカモメちゃんの背中に乗った。


凍雨君がアレクサンドロヴィチ3世の背中にヒョイッと飛び乗る。


「よ~し頼むぞ~。アレクサンドロヴィチ3世!」


ペチペチ甲羅を叩く姿は余裕そのもの。


ペンギン軍団には遭遇するし、爆走する牛の背中に強引に乗せられるし。


あげく亀に乗って空まで飛んじゃったらもう、怖いもん無しだろな。


雪と氷しか無い世界から、一転してモロにファンタジーな現実に直面しちゃったもんね。


凍雨君たら、すっかりたくましくなっちゃって。


やっぱり将来有望だよ彼は。


門川君とあたし、そしてしま子は絹糸の背中に跨った。


「飛ぶぞ」

タンッと踏み切り、絹糸は軽やかに浮上する。


あたし達は冬の空に舞い上がった。


あっという間に小さくなるムク犬ブラザーズと刺客部隊達。


それを尻目に冷たい風を切りつつ、目的地に向けて前進する。


あたしの前には門川君が、そして後ろにはしま子がいる。


前後を挟まれているせいか、空を飛ぶ恐怖感は少しだけ薄らいでいるけど・・・。


う~~~! さむ――っ!!

この風の冷たさだけはどーにも辛いよ~!!


肩をすぼめてヒーヒーしてるあたしと違って、門川君と凍雨君は平然としている。


やっぱり氷血の一族だねぇ。これぐらいが気持ち良いぐらいなんだろうな。


だからって夏に弱いわけでもないみたいだし。


真夏のギンギン猛暑の時でも平然としてる。きっと冷気の力を操ってるんだろう。


・・・なーんか、やっぱりズルイよ。

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