神様修行はじめます! 其の三
塔子さんは大丈夫かな?

着物一枚だけだし、しかも袖を破いてノースリーブにしちゃったし。


後方を飛んでいる塔子さんの様子をチラチラ伺う。


「塔子さん凍えてないかなぁ?」

「お前もたいがい、人が良いのぉ」


絹糸がそんなあたしに話しかけてきた。


「あれだけイビられながら、よくそんな心配ができるものじゃわ」

「だって一緒に戦う仲間だし」


今はそんな細かい事、うだうだ言ってる場合じゃないしさ。


重箱の隅をつつくような小姑みたいなマネしてる状況じゃないもん。


門川君を守りたいって思っているなら、それはあたしと同じ気持ちだし。


「確かに塔子にとっての小娘への感情は、いわば同族嫌悪のようなものじゃろうな」


「どうぞくけんお?」


「似たもの同士、という事じゃ」


あたしも塔子さんも、身内に大罪を犯した者がいる。


だから門川君に負い目があって、彼を守りたいと思っているし、彼を大切に思っている。


でもヘタに近づくと彼に悪影響が及びかねない。


なにせ自分は大罪人の身内。


彼のために何かをしてあげたいのに、もどかしい、やるせない気持ち。


だから塔子さんは門川君の奥方になろうとしたのかな?


奥方になれば正々堂々、彼のそばで彼のために働ける。


男性への愛情とは違う気持ちで、門川君の奥方になりたかったのかもしれない。


自分の結婚も一生も全て捧げて門川君を守ろうと決意した。


・・・なんだ、結構いい人じゃん塔子さんてさ。


そこに、自分の悲壮な決意をよそに、ひょいっと現れた現世の女の子。


大罪とか償いとか、なあぁ~んも考えてなさそーなタイプ。


実際、全然考えてなかったんだけどさ。


自分と同じ立場のはずなのに、門川君本人はもちろん、彼の側近達にも大事にされて。


いつもへらへら笑って彼のそばにくっついてる。


・・・・・・

ムカつくわー。そりゃ。

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