神様修行はじめます! 其の三
絶対に無理だね。いくら似たもの同士でもマッチングするわけないじゃん。


磁石の同じ極同士で反発するようなもんだよ。


そっかー。あたしと塔子さんてそういう複雑な関係だったのね。


今回の一件で、いくらかでもそれが変化するかな? 


「そうなればいいなぁ」

「人間とは実に興味深い生き物じゃな」


絹糸の面白そうな声。


「塔子や小僧に対して、お前達はそれなりに含む感情があろうに」


うーん。そりゃ丸っきり何の感情もありませんってわけじゃないよ。


凍雨君に裏切られたと知った時はショックだったし。


イビられてた時は塔子さんのこと、普通に憎ったらしかったし。


それで当然だよね? なーんも感じなかったらバカじゃん、それ。


「でもさ、ちゃんと理解できたから」


理解すれば、できるんだよ。


飲み込める部分と、飲み込めない部分の判断がさ。


なにも事情を知らずに相手を恨むだけってのは、一見、気が楽なようだけど。


実は案外そうじゃなかったりする。


救いが無いんだよね。どこにも。


理解できれば救いがあるんだ。


事情は分かったから、まぁここは免じてグッと飲み込もうとか。


逆に、事情は分かったからやっぱり許せなくて当然だとか。


形は色々だろうけど、そう思った自分の感情を納得する理由が見つかる。


善し悪しは別として、相手を許すも許さないも、それは個人の心の判断の自由で。


自分が下した判断を、自分に許してあげることができるんだ。


それは救いだと思う。


「あたしはさ、理解したうえで凍雨君とも塔子さんとも、うまくやっていけたらいいなと判断するよ」


そしてあたしは救われた。


もしあたしがふたりを許せなくても、事情を知ったうえでの判断なら、あたしはあたしのその感情を認めてあげられる。


それは、やっぱり救いだ。


理解と、許しと、救い。


まるで複雑なパズルみたいだ。

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