神様修行はじめます! 其の三
塔子さんの呼吸に合わせて、彼女の闘気も燃えるように増幅されていくのが感じられる。
あれよと言う間に集中した熱量が、まだまだグングン上昇していく。
濃縮する力が目に見えるようで、思わずその様子に目を奪われる。
うわ、すごい! 天井知らずに強烈な力の一極集中だ!
なんだか、塔子さんに向かって体まで引っ張られているような気がする。
これが怒涛の一族の力なんだ・・・!
彼女の全身は強大な力に覆われ、もはやひとつの兵器と化した。
人間兵器と化した力を制御するために、右腕が激しく痙攣している。
力のコントロールを失敗して、莫大な威力を秘めた拳を暴走させてしまったら、この場にいるあたし達全員、ひとたまりもない。
綱渡りのような制御を保つ彼女の目蓋が、頬が、ヒクヒクと引き攣っている。
無心の塔子さんに、あたしの心はいつしか同調していた。
同調・・・力の流れ・・・
そう、視て・・・
高めて・・・燃えて・・・熱く・・・
熱く・・・・・
「今だっ!!」
ガッ!と塔子さんの両目が大きく見開かれ、同時に右拳が腰まで引かれた。
目にも止まらぬスピードで前方に繰り出された拳が、兵器の力を一気に爆発させる。
「どりゃああぁ―――っ!!!」
白い歯の間から搾り出された咆哮が、耳に突き刺さった。そして・・・
空間全体が、一面『ザンッ!』っと揺らめいて、巨大な水面に波紋が広がるように一瞬何も見えなくなる。
そして、あたしの体の中を不快な衝動波が突き抜けた。
うっ! 一気に破壊された術の、衝撃が・・・!
気持ち・・・悪・・・!
押し寄せる吐き気を背中を丸めて耐えながら、なんとか前方の様子を確認した。
すると目の前には、まるで飲み込まれそうなほど巨大で不気味な、黒い門が開かれていた。