神様修行はじめます! 其の三
「雛型、お願い出てきて」


千年前、確かにあなたは罪を犯した。

苦しみ、悩み、せめてもの償いとして、雛型となった。

いつの日かきっと罪は消えると信じて。
でも・・・。


消えないままに、千年経ったね。

そしてあなた一人を置き去りにして、時は流れてしまった。


もう、誰もいないんだ。

あなたを罪人だと、堂々と断罪できる権利のある人は、どこにもいない。


残酷だよね。

やっと目覚めた時には、あなたを責めた人も、罪を裁いた人もいない。


愛した人も、愛してくれた人も、誰もいない。


赦されるはずも、癒されるはずもないのに、償う事だけを強要されて。


あなたをこんな目に遭わせた、責めるべき相手すらいないなんて。


こんな救いの無い話はないよ。

辛いよね。悲しいよね。


だからこそ、話そう。あたしに話してよ。

もう、誰もいないから。

あなたの言葉に、もう誰も、異議も文句も言わないから。


誰も・・・責めないから。


もう、癒されよう。

もうそろそろ癒されてもいいんだよ。あなたは。


だって誰もいないんだもの。

誰もいなくなってしまったのに、あなただけが今でも苦しみ続けるなんて。

そんなの、ないよ。


犯した罪は消える事はないから、あなたが赦されるという事は、永遠に無いのかもしれない。


でも人は、誰でも罪を犯して生きていく。

だからこそ、誰にでも癒される権利があるとあたしは思う。

雛型、あなたもだよ。


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