神様修行はじめます! 其の三
「雛型は、あの中におりまする」


マロの視線の先には、あの赤い布に覆われた小さな建物がある。
最初にマロが出てきた、あの場所だ。


「あの布の中へ進めば、雛型と会えましょう」

「そうか。それでは典雅殿、後は任せた」

「はい。・・・永久殿、絹糸殿、天内殿」


マロは真剣そのものの顔で、あたし達を食い入るように見た。
その目には、深い後悔の念が刻まれている。


「どうか雛型を頼みまする。導いてくだしゃりませ」
「分かっておる。案ずるな」


絹糸が深く頷いて、マロが安心したような、悲しそうな、複雑な表情で頭を下げた。

大丈夫だよマロ。
ちゃんと雛型を連れて戻って来るからね。


「では皆、行こう。雛型の元へと」


あたし達は揃って、小屋へと歩き出した。

あの酸の海にも、あたしの滅火の炎にもビクともせずに、小屋はポツンと建っている。

ほんっと凄いなー。マロの結界術って。
・・・なんか負けたみたいで、ちょっと悔しいな。


小屋の前に並んで立ち、門川君が赤い布をゆっくりとめくり上げると、中は・・・真っ暗だった。

まさに暗黒。明かりひとつ無い真っ暗闇で、奥行きも、幅も、なにひとつ窺えない。

停電になった時の室内よりも、視界不良で危険だよ。


「では、行くとするかのぅ」

「こんな暗くて大丈夫かな? やみくもに進んで、タンスとか家具にぶつかったら危ないよ」

「生活空間と違うわい。我の後に続け」


先導してくれる絹糸に続き、門川君があたしの手を握って、建物の中へと入った。

彼に引っ張られながら後ろを振り返ると、マロがこっちをじっと見ている。

大丈夫だよ。心配しないで待っててね。
みんなをよろしくね。


あたしはマロに笑顔を見せて、赤い布をくぐった。

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