神様修行はじめます! 其の三
・・・・・・。

お岩さん、執拗なまでに『振袖』を連発連呼してる。


振袖って、歳の若い未婚女性が着る礼装だからなぁ。


「そういえば塔子さんって、いま年いくつ?」

「私はまだ28よ!」


思わず口に出たあたしの疑問に、塔子さんが目を吊り上げて即答した。


28? って事は今年で29になるのか。30手前なんだね。


「ねぇアマンダ。永久様っておいくつだったかしら?」


「あたしと同学年だもん。当然10代後半」


「・・・・・・」


あたしとお岩さんと絹糸としま子が、揃って同時に塔子さんを見た。


塔子さんたらもう、左右のこめかみに青筋がバリバリ浮き上がっちゃって。


この青筋がまた、見事に左右対称なのよ。シンメトリー青筋。


多分、基本的に真面目な性格なんだろうなぁ、この人。


青筋までキッチリ揃ってるくらいだもんね。


お岩さんのお陰で、あたしは冷静に塔子さんをまじまじと観察する。


こうして見ると、塔子さんってさ、まだまだ小者だなぁ~~。


なんとなく奥方の再来みたいに思えて、必要以上に構えちゃったけど。


まだまだ全然、あの領域には至っていない。


可愛いもんだよ。うん。


まぁ、あの奥方が大物過ぎたんだけどさ。


大物過ぎっていうより、人間そのもの超越しちゃってたけど。


「皆様、こちらにおいででしたか」


物静かな声が聞こえた。

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