神様修行はじめます! 其の三
真っ黒な燕尾服。


真っ黒なアスコットタイ。


対照的に真っ白な手袋。


執事スタイルの美貌の青年が、すうっと伸びた綺麗な姿勢でこちらに歩いてくる。


「あ――! セバスチャンさん!」

「お久しぶりでございます。皆様」


きゃあっ!と黄色い声がした。


何事?と見ると、乙女会が袖や扇で顔を隠してキャアキャア騒いでる。


・・・あぁ、セバスチャンさんを見て騒いでるのか。


「こ、これはセバスチャン殿!」


「塔子様。ごぶさたをいたしております」


「お元気そうですね。おほほ・・・」


あたし達と話していた時より、2オクターブくらい高い声で塔子さんが笑った。


立方体状態で浮き上がっていた青筋も、すっかり引っ込んでる。


「ジュエル様就任の際は、お父上様に格別のご配慮を頂戴し、お礼の言葉もございません」


「当然です! 我が一族と権田原一族は、深く固い絆で結ばれているのですから!」


・・・いつ結んだのよそんなもん。

お岩さんが隣でボソッと呟いた。


「そ、それでは私ども乙女会は、これでおいとま致します」


「そう? ごきげんよう塔子さん」


「それでは・・・おほほほ・・・」


チラチラっと視線をセバスチャンさんに投げつつ、しなしなと乙女会は去って行く。


・・・全っっ然、態度が違う。さっきまでとは。


同じ姿かたちでも別人みたい。脱皮でもしたのかしら?


どっかに皮が落ちてない? 皮。


ヘビ皮って財布に入れとくとお金が溜まるって、昔ばー様が言ってたっけ。

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