神様修行はじめます! 其の三
「どいつもこいつも揃いも揃って。・・・我の胃に穴を開けるつもりか?」


「胃薬あるよ? 飲む?」


「いらぬわ!」


噛み付くように答える絹糸の背中を、しま子が同情深い目をしながら撫でさすった。


「善は急げだ。さっそく出かける手はずを整えよう」


「わたくし達もお供いたしますわ」


「え? お岩さん達も一緒に来てくれんの?」


「端境は、どうせ永久様を舐めているのに決まってますわよ! わたくしが鉄拳をくらわせてやりますわ!」


鼻息も荒く、お岩さんは雄々しく立ち上がった。


セバスチャンさんも立ち上がる。


「それでは、永久様の外出を連絡してまいります。さすがに何も言わずに姿を消すわけにもいきませんので」


「永久様、のちほど合流いたしましょう!」


お岩さんとセバスチャンさんが立ち去る。


あたしは絹糸としま子と一緒に、門川君が着替えるのを廊下で待っていた。


「やれやれ。どう考えても、またひと悶着起きるのぅ」


「でもセバスチャンさんだって賛成してくれたよ?」


頭のいいあの人が言う事なら間違いないんじゃない?


「あやつは、永久が静かにしておる間に、特定の一族が権力を持ちすぎる事を懸念しておるのじゃろう」


「ふぅん・・・?」


「権力は強大になり過ぎれば押さえが利かぬ。そうなる前に楔を打ち込むべきだと言うておるのじゃ」


「ほぉん・・・?」


「まさしくその通りじゃ。だが、のぅ・・・」


絹糸は思案げにブツブツ呟いている。


あたしは難しい話はよく分からないや。


とにかく、門川君が望むようにしてあげたい。あたしの頭の中はそれだけだよ。

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