神様修行はじめます! 其の三
「待たせた。行こうか」


着替えを終えた門川君が襖を開けて出てきた。


着流しから羽織袴に着替えている。


上下とも薄墨色の、無地で質素な出で立ちだけど、門川の紋が染め抜きで入っている。


生地がまぁ、上品に艶光りして綺麗なこと!


門川君てホント、こういう抑え目な和服が似合うんだよねぇ。


顔が見事に綺麗な分、衣装は控えめな方がいいのよね。


ほれぼれしちゃうよまったくもう。


門川君を先頭に、廊下を進んで行った。すると・・・


「当主様、しばしお待ちくださいませ」


前方に袴姿のオヤジ達が数人、廊下の真ん中に陣取って待ち構えていた。


絹糸が「来たか・・・」と小さく息を吐く。


門川君は無表情で歩みを止めた。


「端境の一族の元へお出ましになるとの事、聞き及びました」


「なりません! なりませんぞ当主様!」


「さあ、お部屋にお戻りを。当主様には一刻も早く奥方を決めていただかなければ」


やいのやいのと言い募り、門川君を部屋へ戻そうとする。


あたしは心の中で溜め息をついた。


だーかーらー。

嫁選びよりも、こっちの方がよほど大事でしょうが。


あんたらの優先順位って何が基準なのよ。


そんなに見たいか。自分の娘の花嫁姿が。


「僕は、行く必要があるから行くと言っているのだ」


それに対して門川君はあくまで淡々と返答する。


その堂々とした大人びた態度が、あたしにはとても頼もしく見えた。


でも袴オヤジ軍団は、そんな彼を一笑に付す。

< 65 / 460 >

この作品をシェア

pagetop