神様修行はじめます! 其の三
今度は絹糸を非難し始めた。


絹糸はカリカリと後ろ足で頭を掻きながら、平然と聞き流している。


馬の耳ならぬ、猫の耳に念仏だ。


「当主様が誤った判断をなされた時に、お諌めするべきだろう!」


「なんのために側仕えをしているのだお前は!」


「役に立たん猫だ! 天内の娘もまったく頼りにならん!」


な・・・なによ!?

今度はあたしにまで八つ当たり!?


そりゃ自分でも頼りになる護衛係だとは言えないけど!


少なくとも、娘の嫁入り以外は頭真っ白なバカオヤジ軍団よりかはマシよ!


染めろ! その頭を! 中まで!


「側仕えがこれでは安心できん」


「まったくだ。やはり猫も天内の娘も当主様から離すべきだ」


「我々の中から、もっと優秀で頼れる者をお付けするべきだ」


「そして一刻も早く奥方を決めていただかなくては」


・・・ちょっと! とどのつまり、またその展開か!


嫁入りと子作り以外に関心無いわけ!? あんたらは! このスケベ!


そんなに優先事項なら、自分で上げろ! 門川の出生率を!


つい、下から睨み上げるような目でオヤジ軍団を見てしまった。


オヤジ達は蔑むような目であたしを見返す。


「なんという目付きをする娘だ」


「こんな娘がお側にいては、当主様に良いわけがない」


「そうだ、なんと言ってもこの娘は・・・」


一呼吸置いて、ハッキリと区切るように言い放つ。


「大罪人の血を引く娘だからな」


――ズキ―――ン!!


あたしの心臓が矢で射抜かれたように激しく痛んだ。

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