夕凪
『圭介にはまだ言ってないよね。』
今日の圭介の様子を見ていれば、それはすぐに分かる。
「とりあえず2人で話した方が良いって。」
里奈はそう言うと携帯を取り出して電話をする。
杏はそれをじっと眺めているだけだった。
「…今から杏の家来て。……うん。いいから早く。……じゃあね。」
電話を切ると、里奈は杏の頭を撫でながら言う。
「すぐ来るって。」
杏は里奈にしがみついて泣いていた。
私は何も出来ずに立ち尽くしていた。