夕凪

それは、話し合っても結果が出なかったことを意味した。


「とりあえず、今日は帰れ。1人でゆっくり考えろよ。」


悟がそう言うと、皆一緒にリビングを出る。


リビングは私と颯太だけになった。


『…産む…かな?』


「俺は産んでほしいな。」


颯太は掠れた声でそう言った。


「まだ高校生だけど、新しい命は殺したくない。俺だって手助けならいくらでもする。」


『…そうだね。』


「茉咲は悠斗の機嫌とってきな。」


初めて颯太が帰るときに違う言葉を言った。

いつもは
「じゃあ、邪魔だから帰るね。」
そう言うのに。
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