夕凪
「俺が見たのと同じ人。」
颯太はじっと悠斗を見つめたまま小さく呟いた。
ゆっくりと、2人に気付かれないように後ろからついていくと
2人は私たちに気付くこともなく家へと入っていった。
それを確認すると颯太が私の手を引っ張る。
私は一生懸命足を踏ん張って、それを拒んだ。
颯太は不思議そうな顔をする。
「行かないの?」
颯太は今にも泣き出しそうな私の顔を覗き込むと
「ごめん。」
そう言って悠斗の家とは反対方向に歩き出す。