夕凪

『…浮気とかかなぁ?』

玄関の前で俯いたまま、圭介に問いかけた。


圭介は、勝手に私の家の玄関を開けると靴を脱いで
「おじゃまします。」
と言って家に上がる。


それに続いて家に入ると、圭介はリビングにいた。


『何か飲む?』

「コーヒー。」


その、いつもと変わらない態度に腹が立ちながらも懐かしくなった私は、少し気持ちが落ち着いていた。


コーヒーを入れていると、圭介はいつの間にかテレビを見ていて
私に背を向けたまま話し出した。


「俺は悠斗と友達だけど、茉咲とも友達だ。
浮気なんかしてたら俺がぶん殴ってやる。
安心して話してこい。
もし別れることになったら、また俺が運命的な出逢いを作ってやるよ。」


そう話した圭介の背中は、なんだか頼もしく見えた。
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