夕凪
―出逢い―
「あちー。溶けるー。」
『溶けちまえ。』
入学してから3ヶ月。
もう7月に入り、外では蝉の合唱が鳴り響く。
公立高校にエアコンなんて気の利いた物はなく、唯一あるのは自然風のみ。
担任の
「とりあえずしばらくは席替えなしな。」
の一言により、私の右側は未だうるさい人物のまま。
「あちー。あちー。」
『うるさいなぁ。暑い暑い言うと余計暑くなる!』
「暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い!!!」
『あぁ!もう!』
右側に向けて座り直すと、うちわが目に入る。
うちわには"祭"の文字。
一年中大騒ぎなこの男にはぴったりの文字だ。
『お祭り人間。あと1週間もすればあんたの顔を1ヶ月以上見なくて済むと思うと嬉しくて涙が出そうよ。』
私の精一杯の嫌味なセリフを聞いて、お祭り人間がニヤリと笑う。