夕凪


「おはよう。おじゃましまーす。」


悠斗は家に上がるとリビングに入ってくる。


テーブルに置かれた2つのコーヒーカップを見て彼は私の顔を見た。


「誰か来てたの?」


『うん、圭介。』


「そうなんだ。」

彼は笑いながらイスに座るとネクタイを緩める。


『あのね、少し前に颯太から電話があって。』


私は圭介のコーヒーカップを下げて、新しいコーヒーカップを置く。

彼は、じっと私の話を聞いていた。


『悠斗が、家に女入れてるって。』


私は彼の反応を見ながら、少しずつ話す。


『だからこの前、悠斗の家の近くの公園で見張ってたの。』


悠斗は何も言わず、表情1つ変えずにコーヒーを飲んでいる。


『そしたら、悠斗が女の人と家に入って行ったよ。』


彼の顔をじっと見ると、彼もまた私を見て、しばらくすると微笑んだ。
< 142 / 148 >

この作品をシェア

pagetop