夕凪
残ったのは私と悟。
悟はテレビから流れるワイドショーをぼーっと眺めていた。
空になったカップを持って悟を見つめていると、悟は無言で立ち上がってコーヒーを入れてきてくれた。
『ありがとう♪』
「おう。」
悟はこたつに入るとテレビに顔を向けたまま話し出す。
この人たちは、聞きずらいことがあるといつもテレビを見ながら話しかけてくる。
「お前、まだ涼たちと遊んでんの?」
『…?
うん、たまにだけどね。』
「そうか。悠斗が心配してた。」
『うん。』
「珍しく、気の小さいこと言ってたからよ。」
『うん。』
「前に、2人で居たとか何とか。」
『うん。』
「ま。浮気でもすんなら、俺らの目の届かないとこにしてくれ。」
『そうだね。』
悟はフフッと笑った。
私もそれにつられて笑う。
私が浮気なんてする気がないことは、悟はよく分かってる。
"珍しく悠斗が弱音を吐いたから、心配させるようなことすんなよ。"
そういうこと。