夕凪

残ったのは私と悟。

悟はテレビから流れるワイドショーをぼーっと眺めていた。

空になったカップを持って悟を見つめていると、悟は無言で立ち上がってコーヒーを入れてきてくれた。

『ありがとう♪』

「おう。」


悟はこたつに入るとテレビに顔を向けたまま話し出す。

この人たちは、聞きずらいことがあるといつもテレビを見ながら話しかけてくる。


「お前、まだ涼たちと遊んでんの?」


『…?
うん、たまにだけどね。』


「そうか。悠斗が心配してた。」


『うん。』


「珍しく、気の小さいこと言ってたからよ。」


『うん。』


「前に、2人で居たとか何とか。」


『うん。』


「ま。浮気でもすんなら、俺らの目の届かないとこにしてくれ。」


『そうだね。』


悟はフフッと笑った。

私もそれにつられて笑う。

私が浮気なんてする気がないことは、悟はよく分かってる。

"珍しく悠斗が弱音を吐いたから、心配させるようなことすんなよ。"


そういうこと。
< 147 / 148 >

この作品をシェア

pagetop