夕凪

「これで忘れたとは言わせない。」

圭介は手帳を私の机に置く。

7月27日の欄には汚い字で
"飲み会"
と書かれていた。

『あ―――!勝手に書くな!』

「なんだよ、朝からうるさいなぁ。」

手帳から目を離して正面を見ると悟が立っていた。

『ちょっとー、聞いてよ。圭介があたしの手帳に……』

「こいつ27日の約束忘れてやがったんだよ。」

私の言葉を遮り圭介が立ち上がる。

悟はクスクスと笑い、自分の席にカバンを置いてまたこちらに戻ってくる。

「そりゃあ怒るわな。」

彼は長めの髪をいじりながら、目を細めて圭介を見ている。

「うっさい。」

圭介は顔を赤くして教室を出ていった。


『何あれ。なんで怒ってんの?あたしが怒りたい立場なのに。』

「あれ?お前気付いてないの?」

悟は不思議そうな顔で私を見る。

『何?』

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