夕凪

その言葉を聞いて杏が私の顔を覗き込む。

「ホントだ。何か良いことあった?」

『あったあった。教えないけど。』

私は緩んだ口元を抑えながら教室を出た。

圭介を探す為に。

圭介はうるさいけど、この数ヵ月で良い奴ということは分かった。

杏も大事な友達だから、うまくいってほしいと思う。

そんなことを考えるとまた口元が緩み、私は両手で口を抑えながら廊下を歩いていた。

下駄箱の近くまで行くと、近くの自販機でジュースを買う圭介を発見。

私は小走りで彼に近寄った。

『悟に聞いたよ♪』

そう言いながら肩を叩くと圭介は大きな目を更に見開いた。

「……あのお喋りが。」

『早く言ってよー。協力するって。杏可愛いもんねー。早くしないと誰かに取られちゃうかもねー。』

圭介は呆れたように私を見て、教室に向かって歩き出す。

「だから、とりあえず27日はお前がいないと困るんだよ。」

『悟にも言われた。バイト終わったらすぐ行くって♪』
< 19 / 148 >

この作品をシェア

pagetop