夕凪
その言葉を聞いて杏が私の顔を覗き込む。
「ホントだ。何か良いことあった?」
『あったあった。教えないけど。』
私は緩んだ口元を抑えながら教室を出た。
圭介を探す為に。
圭介はうるさいけど、この数ヵ月で良い奴ということは分かった。
杏も大事な友達だから、うまくいってほしいと思う。
そんなことを考えるとまた口元が緩み、私は両手で口を抑えながら廊下を歩いていた。
下駄箱の近くまで行くと、近くの自販機でジュースを買う圭介を発見。
私は小走りで彼に近寄った。
『悟に聞いたよ♪』
そう言いながら肩を叩くと圭介は大きな目を更に見開いた。
「……あのお喋りが。」
『早く言ってよー。協力するって。杏可愛いもんねー。早くしないと誰かに取られちゃうかもねー。』
圭介は呆れたように私を見て、教室に向かって歩き出す。
「だから、とりあえず27日はお前がいないと困るんだよ。」
『悟にも言われた。バイト終わったらすぐ行くって♪』