夕凪
なんか、もう。
身動きが取れなかった。
別に、すごくかっこいいわけじゃない。
すごくタイプなわけでもない。
なんだか分からないけど、彼と目が合った瞬間、もう視線をずらせなかった。
彼も全く身動きを取らなかったし、私たちは時間が止まったかのように見つめ合っていた。
「―――――おい!どうした?」
悟の声がして我に返った。
『あ、ごめん。』
「何?知り合い?」
圭介がタバコに火をつけながら彼を見る。
「……いや、違うけど。なんか、固まっちまった。」
少し掠れた声。
やわらかい喋り方。
華奢な体。
暗めの茶色い髪。
黒目がちな垂れた目。
あなたを造り上げる全てに魅力を感じた。
彼は、まだ私を見つめながら話をする。