夕凪
「会ったことないよね?」
『…たぶん。ない。』
私たちの会話を皆は不思議そうに聞いていた。
まだ名前も知らない彼に何を感じたのかは分からないけど、間違いなく自然に私たちは惹かれ合っていた。
「まぁ、同じ市内に住んでれば見たことくらいあるんじゃね?」
もう1人の知らない男の子がそう言った。
「…まーな。」
皆も同じ返事をする。
只、私と彼だけはその言葉に頷かなかった。
そんな風には思えなかったから。