夕凪
外に出ると、お酒を飲んだ体を冷やすのに丁度良い気候だった。

「寒くない?」

『平気。少し暑かったから丁度良いよ。』

私の少し前を歩く彼は、近くの公園へ入っていく。

ベンチに腰をおろすと、砂場には子供たちが遊んだ跡がある。

「さっき、ごめんね。なんかよく分かんないんだけど、固まっちゃって。」

彼は恥ずかしそうに少し目線を落とした。

『…ううん、大丈夫。あたしもだったから。よく分かんないけど。』


そして、落とした目線を戻し私を真っ直ぐに見て彼は言葉を続ける。


「なんの根拠もないけど、俺茉咲ちゃんを好きになると思う。で、茉咲ちゃんも俺を好きになると思う。」


照れくさそうに、でも、しっかりとした口調であなたは言った。
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