夕凪

圭介の部屋に戻ると、もう皆眠りについていた。

幸せそうに眠る圭介を見て、悠斗くんは優しい笑顔を見せた。

「杏ちゃんのこと、すごく好きみたいだね。」

彼はそう言いながら部屋中に散乱したビンやカンを拾い始める。

私も彼を見て片付けを始めた。

『あたし全然気付かなかったの。悟に言われて初めて知ったよ。』

「こいつ分かりやすいけどね。きっと、恥ずかしいから茉咲ちゃんにはバレないようにしてたんだよ。」



彼の声を聞いていると、自然に心が落ち着いた。

心地良い、少し掠れたやわらかい喋り方だからだと思う。

彼の声は私を優しい気持ちにして、
彼の笑顔は私を楽しい気持ちにして、
彼の真っ直ぐな目は私を素直な気持ちにさせる。
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