夕凪
いつの間に眠っていたんだろう。
なんだか騒がしくて目が覚めた。
まだ開ききらない目を擦りながら起き上がると、目の前には里奈の顔がアップ。
『わ。何?』
「圭介って、杏が好きなの!?」
私は慌てて里奈の口をふさいだ。
目だけで杏の姿を探す。
「大丈夫。杏ちゃんいないよ。」
頭の上から心地の良い声がした。
上を向くと、やっぱり彼だ。
彼はニッコリと笑いながら私にコーヒーをくれた。
『ありがとう。何で杏いないの?』
「用事あるから先帰るって。圭介が送って行ったよ。」
部屋を見ると、悟はまだ眠っていて、里奈が興奮しながら颯太くんに話しかけている。
颯太くんはテレビに夢中だ。
「茉咲いつから知ってたの!?」
『んーと、夏休み入るちょっと前かな。里奈も気付かなかったよねぇ?』
里奈は興奮したまま何度も頷いた。