夕凪

「あいつにしては珍しく、隠せてたんだなー。」

颯太くんがそう言うと、悠斗くんは微笑んだ。

「悠斗くんて、よく笑うね。」

里奈が呟くように言った。

「こいつは何言っても笑ってるよ。」

颯太くんがテレビに釘付けになったまま答える。

「そうなの?」

里奈の質問に今度は悠斗くんが答える。

「さぁね。」

そう言いながらも、彼は笑顔だった。


「愛されて育ったんだね。」


里奈のその言葉に、颯太くんが一瞬反応した気がした。

振り向きはしなかったものの、反応したような感じがしたのだ。




彼はそのときも、何も言わずに笑っていた。
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