夕凪

メールだと思い込んでいた私は動揺しながら通話ボタンを押す。

『もしもし。』

「あ、俺。悠斗。今平気?」

『うん、大丈夫。』

そう言った私の心臓は大丈夫そうではなかったけれど。

「いきなり電話してごめんね。メール返そうと思ったんだけど、なんて返していいか分かんなくて。電話しちゃった。」

電話の向こうで彼が笑ったのが分かった。

当たり前だ。あんな短いメールを送られたら返信に困るだろう。


『ごめん。あたしも何て送ったらいいか分かんなくて、すごい短文で。』

彼は、いいよいいよと笑う。

30分くらい喋っていたとき、彼が話を切り替える。
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