夕凪
『悠斗くんて、兄弟いるの?』
本当に、なんとなく聞いた言葉。
両親がいて、兄弟がいて、そんな暮らしが当たり前の私には家庭環境の複雑さなんて理解したくても本当の意味では理解ができない。
「うん、兄貴がいるよ。茉咲ちゃんは?」
『あたしは弟がいる。まだ小学生だよ。』
私には少し年の離れた弟がいる。
「そうなんだ。家族仲良い?」
そう聞いてきた彼の表情は少し寂しげに見えた。
『うん、すごく仲良しだよ。悠斗くんの家は?』
言った瞬間に後悔した。
明らかに彼の顔が曇ったのが分かったから。
「うちの家、ちょっと複雑で。両親もいるんだけどね。俺、1人で暮らしてるんだ。」
一瞬意味が分からなかった。
だって、まだ私たちは高校生だ。
悠斗くんは圭介と同じ中学だから、この街が地元なはずで。