夕凪
『え?実家じゃないの?』

彼の茶色い髪は、オレンジ色に輝いている。


彼は、もうすぐ水平線に消える夕日を見ながら答える。

「んーとね、実家なんだけど1人なんだ。」

黙り込む私に一瞬視線を移し、彼はまた夕日を見ながら言葉を続けた。

「望んで1人になったから、文句なんて言えないけど。やっぱ、1人は寂しいよね。」

そう言いながら無理に笑う彼の横顔があまりに綺麗で、私は言葉を失ったまま彼を見つめていた。


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