夕凪
杏は嬉しそうに頷いた。
その表情を見て、私も笑みが溢れる。
杏と里奈が同じクラスというだけで、さっきまでの帰りたい病は嘘のように収まった。
けれど、周りを見ても里奈の姿はない。
杏と2人で探してみても、彼女は見当たらなかった。
そんなことをしているうちに司会の先生らしき人がマイクに向かって話し出す。
入学式は校長や来賓の長い話と初めて聞く校歌で終わった。
『里奈いないね。メールしてみよー。』
私はそう言うと携帯電話を取り出し、里奈にメールをする。
先生の指示で教室に向かうよう言われた私たちは、席を立ち出口に向かって歩いていた。