夕凪

原付に乗って、海まで行くと皆の自転車とバイクが停まっている。

顔を上げると、皆の姿が見えた。

火を起こしたり、材料を切ったり、飲み物を運んだり。

この晴天にウンザリしていた私も、楽しい気持ちになる。

原付を停めて、遠くから皆を眺めていると男の子がこちらを向いた。


悠斗くんだ。


彼は私に見えるように大きく手を振った。

私もそれに答えるように手を振り返す。

彼の後ろにいた圭介が私に気付いて叫び出す。


「―ゃ――く――ぉ―――ぃ!!!」


よく聞こえなかったけど、
"早く来い"
と言っているんだろう。

私は溜め息をついて砂浜へ向かう。
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