夕凪
「あ!里奈!」
杏の言葉に反応した私は彼女の目線の先を追う。
そこには体育館の壁にもたれかかり、携帯電話とにらめっこをしている金髪の女の子。
『里奈ー!』
私たちの声を聞いた里奈は嬉しそうに駆け寄る。
「なんか、式始まってから着いたら入口にいた先生が中入れてくんなくて。
暇だったから校内探検してたの。
そろそろ終わる頃かなぁって戻ってきてー……」
"柳瀬里奈"
彼女も中学からの友達。
よく喋り、よく笑うとても愛嬌のある子。
「はいはい、分かったよ。今から教室行くんだって。」
話を遮り、杏が里奈の肩を叩きながら言う。
里奈は話を聞いてもらえずに、ぶつぶつと文句を言っていたが私はその光景が可笑しくて笑っていた。