夕凪

海岸に戻ると、皆の所へ行くと思い込んでいた私は砂浜に降りようとした。

階段を降り出すと、彼に腕を掴まれた。

反射的に振り向くと、

「茉咲ちゃん借りたいって言ったのは嘘じゃないよ。」

彼にいつもの優しい笑顔はなかった。

その表情を見て、私も冗談ではないんだと気が付く。

『何か話すの?』

そう言うと彼は笑って頷いた。
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