夕凪
近くのベンチに腰をおろした。
空には満天の星。
海はそれに反射してキラキラと輝いていた。
「茉咲ちゃんが、どう思ってるか分かんないんだけど。俺は好きなんだ。」
私は彼を見ないで、じっと海を見ていた。
「今は好きじゃなくても良いんだ。いつか必ず俺のこと好きにさせるから。付き合って?」
彼は自分に目線を向かせる為に私の腕を肘でつついた。
彼は囁くような小さな掠れた声で言う。
「無理?」
彼の中の"いつか"が、どれくらいの長さを計っているのかは知らない。
"必ず"が実行される程、人生は容易いものでもない。
だけど、"愛してる"なんて、やすい言葉も彼の口から私の為に発するものなら、それは喜びに変わるんだろう。