夕凪
彼はにっこりと笑うと、立ち上がって私を抱き締める。
私の頭は彼の胸にすっぽりと収まり、背中に手を回すと鼓動が聞こえた。
『緊張した?』
「めっちゃした。」
そう言いながら、頭をポンポンと叩くと
「行こう。」
彼は手を差し伸べる。
私も立ち上がり、彼の手を取る。
言葉ひとつで彼氏彼女になる、その行為は不思議だけれど、その言葉がなければ手を繋ぐことも出来ないならば必要なことなんだろう。
彼と手を繋いで歩く夜の海はいつもに増して輝いて見えた。
この幸せがずっと続くように、そんなことを切に願う。