夕凪
リビングに通されると、本当に1人で暮らしているということが分かる。
適度に綺麗にはされているけど、全くと言っていい程家族の気配を感じ取れなかったから。
洗濯物は1人分。
流しに置かれた食器も1人分。
彼は慣れた手付きで飲み物を用意すると、テーブルへと運ぶ。
『本当に1人なんだね。』
「そうだよ。」
彼はタバコに火を着けると白い煙を吐き出す。
『いつから?』
「高校入ると同時に。」
きっと、普通はこんな話をするのは嫌なんだと思う。
だけど、彼はそんなときでも笑顔を絶やさなかった。