夕凪

リビングに通されると、本当に1人で暮らしているということが分かる。

適度に綺麗にはされているけど、全くと言っていい程家族の気配を感じ取れなかったから。

洗濯物は1人分。

流しに置かれた食器も1人分。

彼は慣れた手付きで飲み物を用意すると、テーブルへと運ぶ。


『本当に1人なんだね。』


「そうだよ。」

彼はタバコに火を着けると白い煙を吐き出す。

『いつから?』

「高校入ると同時に。」

きっと、普通はこんな話をするのは嫌なんだと思う。

だけど、彼はそんなときでも笑顔を絶やさなかった。
< 67 / 148 >

この作品をシェア

pagetop